トルコ弦楽器サズ
 

トルコ民謡弦楽器サズ(バアラマ・ジュラ・ボゾック・ディヴァン他)

 民族楽器の多くは、民族を代表しているように見えて、時代、文化、宗教、民族をまたいでいるため、その正確な由来や歴史が不明なものが少なくないのです。

  トルコ弦楽器サズの歴史も実に謎に包まれています。
  明らかに三味線構造なのに、板張に替えれられている点、にもかかわらずシルクロードの板張ロングネックリュート属とは異なる音楽現場で演奏されてきた点などなど。

  これについては執筆中の「三味線のルーツ」をご期待下さい。
 近代のサズは三種類の発展を遂げました。
  一つはトルコ各地の民謡弦楽器としての比較的後世(16世紀)の姿で、トゥルクメン族の伝統音楽がその中心で、三複弦を掻き鳴らします。

  もうひとつは中部アナトリアのスーフィー神秘主義ベクタシュ派と中央アジア西部吟遊詩人の芸能と結びついて生まれた吟遊詩人アシュックの奏法。これには古典音楽の要素も多く見られます。

  三つ目はアシュックの芸能にも関わりながらトルコ民謡の伝統派の歌手と結びついた高度な技巧を持つ近年の流派です。近年では、三番目ばかりが主流の様ですが、本来の伝統は忘れられてはなりません。

   
 
  サズは大きさによっていくつかのタイプがありますが、同じ地域同じジャンルに用いられるものは二〜三種程度です。

民謡では小さいジュラ・サズ、中型のバアラマ・サズ、大型のディヴァン・サズで、アシュックはバアラマを好み、ベクタシュはバアラマとジュラを好みます。

  アシュックの古い形であるオザンはディヴァンを好み、近年の古典派はバアラマの小型のタンブーラ、大型のボゾックを好む、などジャンルの違いを理解しなくてはなりません。
  これらのサズ文化の複雑さを例えて言うならば、老人、大人、子供、または農夫、漁師、医者のトルコ人の内の一人がサズを弾く時彼らはまぎれも無くトルコ人であり、自らも自分をトルコ人と誇りを持って言う。しかし彼らは皆それぞれのサズと音楽文化を持っているという様なものです。
  したがって日本人がサズをトルコ音楽として弾いて紹介する場合、それらの一例を取り出して紹介するのでは不十分なのです。全てのサズ奏法を学ばずに「サズを紹介している」と言うべきではないのです。

  若林忠宏は、1975年頃にトルコ民謡の勉強を始めサズを自作し、1978年にトルコでサズを学んだ日本人(その人は演奏活動は一切されなかった)に手ほどきを受けた後,1980年、三百人劇場の演出家の伯母の紹介で出会ったトルコ新劇の優秀な演出家で趣味で民謡のサズを弾くアルスラン師に本格的な民謡サズを学びました。

  1984年に初めてトルコ大使館で演奏し、年数回の大使館演奏の数年後文化次官よりタンブーラ・サズを寄贈されました。

1994年にはT.B.S.東京音楽祭で演奏。2000年8月新潟で行われたアジア祭で解説者に任命された際、近代サズ奏法の改革者アリフ・サアの弟子のジェム・チェレビ師にアリフ・サア奏法を学びました。


   若林忠宏のトルコ民謡・サズ弾き語り主なレパートリー
 Photo by Keisuke Etou
1、トルコ民謡巡り。
 トラキアとアナトリアをぐるりと一周し,各地域の主要都市、その周辺の民謡を紹介する。50曲に及ぶプログラムで三時間から四時間を要する。

2、吟遊詩人のレパートリー
 古いアシュックの叙事詩、叙情詩のプログラムとベクタシュ派スーフィーのレパートリー。二時間プログラム

3、有名民謡と世俗歌謡、近代曲のレパートリー
 現地トルコで幾度もカヴァーが録音されている様な民謡の定番曲と、新民謡、アラベスク、現代曲。